こんにちは♪アクリル画家の初香です。
アクリル絵の具は水彩絵の具のようにも使えるし、油絵風にも使えるものです。
しかし、油絵は日本人にはあまり馴染みの無い画材なので、油絵風と言ってもどう描けばいいのかわからない、ということはないですか?
今回はアクリル絵の具で油絵風の表現をする描き方をお話しして、実際に描いてみます。
目次
アクリル絵の具と油絵の具の違い
アクリル絵の具は油絵風の絵が描けると言っても、その性質は油絵の具とは随分違うものです。
どのように違うのか一つ一つ見ていきましょう。
水性と油性
油絵の具は油で練り合わされているもので、水では溶かすことができません。
乾性油と揮発油を調合して作った溶き油を使います。
アクリル絵の具はアクリル樹脂で練り合わされているもので、水性なので、水彩絵の具と同じように水で溶くことができます。
油絵の具もアクリル絵の具も一度固まってしまうと溶き油や水で溶け出すことがないので、その点は同じです。
乾燥速度
アクリル絵の具は水分が蒸発して固まるので、水彩絵の具と同じくらいの乾燥速度です。
水の量や絵の具の厚みで乾燥速度は変わりますが、だいたい数分から十数分で乾燥します。
湿度によっても乾く速さが違います。
油絵の具は通常で2、3日~10日で乾きます。
技法の違い
基本的にアクリル絵の具で油絵の技法は使えます。
乾燥が早いため、油絵の具では数日乾燥待ちをする時間が短縮できて、どんどん塗り重ねられるのがメリットです。
逆に油絵の具は画面の上で色を混ぜたり、色の境目をぼかして馴染ませるのにゆっくり作業ができますが、アクリル絵の具は計画的に手早くしないとあっという間に乾燥してできなくなります。
乾燥を遅くするメディウムを絵の具に混ぜると40%ほど乾燥を遅らせることができますが、メディウムを使うとその分絵の具の色は薄まります。
メディウム
他に大きく異なるのがメディウムです。
メディウムは絵の具に混ぜることで絵の具の性質を変えるものです。
乾燥を遅くしたり、艶感を変えたり、他にも色々な効果のものがあります。
油絵にも艶感を増すものや、硬くするものなどありますが、アクリル絵の具のメディウムの種類は圧倒的に多く、その分表現の幅も広がります。
硬さ、色の隠蔽率の違い
メーカーによって絵の具の硬さも違いますが、アクリル絵の具は油絵の具と比べてゆるいものです。
インパストとは絵の具を厚く盛り上げるように塗る技法ですが、アクリル絵の具は硬さがゆるいので油絵の具のようには盛り上げることができません。
アクリル絵の具で油絵の具のようにインパストしたい場合は絵の具を硬くするメディウムを混ぜて絵の具の硬さを調整します。
乾燥を遅くするメディウムと同様に絵の具の色はメディウムの分だけ薄まります。
メディウム無しの状態でも、アクリル絵の具より油絵の具の方が隠蔽率は高いと感じますので、アクリル絵の具で油絵の具と同等の硬さと隠蔽率を作ることは難しいです。
アクリル絵の具の特徴を活かした描き方
アクリル絵の具は表現の幅が広く、制約も少ないので、自分の好きな表現でかけるのですが、
アクリル絵の具の特徴を活用した描き方を紹介します。
重ね塗り
アクリル絵の具は重ね塗りが得意です。
油絵も重ね塗りで描いていきますが、油絵の具は乾燥が遅いので、一層ごとに数日乾燥させる時間をとらないといけないので、制作スピードは遅くなります。
アクリル絵の具ならば、乾燥が早いので、その日のうちに何層も塗り重ねることができて、油絵よりも圧倒的に早く完成させることができます。
メディウムを使ったマチエール
アクリル絵の具はメディウムの種類がとても多いので、様々なマチエールも簡単にできます。
最近人気が高い「テクスチャーアート」はジェルメディウムやモデリングペーストを使って誰でも簡単に描くことができます。
「ポーリングアート」も人気が高いですね。
ポーリングアートはポーリングメディウムを使って液状で、絵の具同士が混ざり合わない性質にし、画面の上に流して描きます。
画面を傾けて絵の具を移動させて出来るも模様を楽しむものです。
「テクスチャーアート」も「ポーリングアート」も子供でも簡単にできて、適当にやってもオシャレなイメージの抽象画になるので、これまで絵に関心のなかった人も気軽に始めています。
他にもメディウムを使って、砂壁のようなマチエールにしたり、蜂蜜のようなとろみの絵の具にして垂らして絵を描いたり、他にも色々なことができるので楽しいですよ。
コラージュ
アクリル絵の具のジェルメディウムはコラージュの接着剤に使えます。
乾きが早く上から絵の具を重ねて描くこともできるので、アクリル絵の具はとてもコラージュに向いています。
アクリル絵の具で油絵風に描いてみた
今回この絵を描きました。
油絵の表現の2パターン
油絵と聞いてイメージするのはゴッホのようなゴテゴテに盛り上がった絵の具ではないでしょうか?
昔の油絵の具は今のものよりもずっとゆるい硬さのもので、薄い絵の具の層を何層にも塗り重ねるものでした。
今のような絵の具の硬さができたのは17世紀頃で、18世紀後半に市販のチューブになったことで、厚塗りが広まりました。
今回はどちらの塗り方も取り入れて描きます。
今回は、100均の絵の具と道具だけで描くチャレンジで描きました。
この写真のものだけで描きます。
絵の具は黒白に、赤、青、黄色の5色のみです。
有色下地
水彩画は白い紙から描き出しますが、印象派以前の油絵は白いキャンバスにいきなり描き始めることはなく、色を付けて「有色下地」にしてから描きます。
有色下地には色々な効果があります。
主な効果には、上に塗る色を引き立てる、中間色を塗っておくことで制作スピードを上げる、明暗をあらかじめ作っておく、などがあります。
有色下地にも色々なタイプがありますが、今回は肌色に向いたくすみグリーンの有色下地から描き始めます。
下書き
下書きは下地の塗る前でも塗った後でも構いません。
アクリル絵の具を油絵のように重ねて描く場合、形が間違っていても上からどんどん絵の具を重ねて修正することができるので、水彩画を描くような緻密な下書きは必要ありません。
逆に緻密に下書きしても絵の具で潰れてしまいます。
画家によっては全く下書きをせずに、絵の具で当たりをとりながら描く人も居ます。
キャンバスに直接描くのもいいですが、キャンバス画面では間違った線が消しづらく描きにくさがあるので、私は紙に下書きをしてからトレースすることが多いです。
広い面で明暗の違いを塗り分ける
油絵風の場合、水彩のように最初から細かく塗り分けることはありません。
最初は細かなところは無視して、ざっくりと大きく明暗を塗り分けます。
明るいところと暗いところ、中間のところの3トーンくらいで分けるイメージです。
絵の具を重ねて描写
絵の具を塗り重ねて、層が重なるごとに少しずつ描写を細かくしていきます。
背景
背景はインパストを意識しました。
水を使わずにチューブから出した絵の具の硬さのまま塗りました。
上の方はキャンバスの表面でかすらせるように塗り、中間は厚めに絵の具をのせてキャンバスの上で絵の具を混色しました。
今回はメディウムを使わないので、ゴテゴテのイメージまでは厚く盛ることはできませんでした。
グレーズ
グレースとは透明色を薄く溶いて、フィルターをかけるように色味を足すことです。
グレースで影の色味や濃さを調整したり、頬の赤みを足しています。
完成
まとめ
アクリル絵の具で油絵風に描く場合は層を何層にも重ねて描くのがポイントです。
有色下地は上から塗る色を引き立てたり、画面の統一感を出す効果があります。
有色下地があるだけで、絵の具の層と色味に深みが出るので初めてアクリル絵の具を使う方には是非やっていただきたい技法です。
絵の具をゴッホのように厚く盛りたい場合はメディウムを使いましょう。
油絵風の描き方ならばどんどん上から重ねて描くことができるので、失敗してもどれだけでもやり直しができます。
慎重になりすぎて制作スピードが遅くなるより、思い切って描き、枚数多く描いた方が上達も早いので、恐れず気楽にどんどん描いてくださいね。
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