こんにちは♪アクリル画家の初香です。
以前の記事でキャンバスの選び方をお話しした時に、キャンバスを自作するメリットも少しお話ししました。
今回はその、キャンバスを自作することについて深掘りしてお話しします。
私は美大で油絵を学んでいましたが、在学していた6年間(大学院も含めて)一度も「張りキャン」(出来上がった状態で売っているキャンバス)を買ったことがありません。
美大では100号~130号という巨大なキャンバスも年に6枚位は描いていましたが、それも全て自分で張っていました。
大学時代の後半はキャンバスでなく、パネルを自作して描いてしました。
大きなキャンバスを自分で張るのは結構な手間で、張りキャンを買った方が圧倒的に楽で早いです。
では、何故あえて手間のかかるキャンバスの自作をするのかお話ししていきます。
目次
キャンバスを自作するメリット
張りキャンを買えば早くて楽ですが、それでもキャンバスを自作するのはそれなりのメリットがあるからです。
自作すると言っても、丸太から木材を切り出したり、布を織るほどの自作ではありませんので安心してください笑
木枠とキャンバス地が別々に売ってあるので、それを自分で組み立てて張るだけのことです。
好みでカスタマイズ
木枠にも木の種類があり、キャンバス地にも色々な種類があります。
なので、その組み合わせのパターンは数多くあるのですが、張りキャンだとその組み合わせは一般的によく売れる組み合わせだけになるので、選びようがないのです。
自分の技法や作風に合う木枠やキャンバス地を、好きなようにカスタマイズできるのが1番のメリットです。
収納スペース
他にも収納スペースの問題があります。
絵を描くことには直接関係のない話なのでどうでもよく思えませんか?
それがなかなか侮れないことなんです。
始めたばかりのころはいいですが、枚数が増えてくるとキャンバスは意外と場所をとります。
画学生となるとものすごい量産することになるので、すぐに生活スペースがなくなります。
画学生でなくてもそのうちそうなってきます。
そのときに自作のキャンバスならば、キャンバスの張り替えをすれば量が減り収納を圧迫しづらくなります。
どういうことかというと、納得のいった作品だけを残して、その他の絵は木枠から剥がしてしまいます。
木枠から剥がした絵は重ねて保管したり、ロール状に丸めて保管できます。
木枠は何度も使い回せるので、新しいキャンバス地を張って新しく絵が描けます。
制作費用を抑えられる
木枠は大きいサイズのものになると結構なお値段がします。
木枠は何度も使い回せるので大きいサイズの木枠を何十枚も買う必要がありません。
全部売り物にするつもりなら張り替えはできませんが、画学生はスペースのこともお金のことも死活問題なので、一つのサイズにつき木枠を3枚前後用意して、ローテーションさせてる人がほとんどでした。
木枠、キャンバス地の種類
木枠やキャンバス地は自分好みにカスタマイズできます。
では、どんな種類の木枠、キャンバス地があるのでしょうか。
木枠
まず、キャンバスに使われている木は、杉と桐があります。
木枠を何度も使い回すつもりならば杉の木枠を選ぶのをお勧めします。
桐は杉よりも柔らかく、強度が低いからです。
キャンバスを張るときや、キャンバスを剥がすときに、キャンバス張り器や釘抜きで凹んでボロボロになってしまいます。
大きなサイズになると張るときにミシミシ軋んで、強い力で張れないものもあります。
桐は杉よりも軽いので、大きなサイズを張りキャンで買うのはお勧めです。
木枠のサイズ
木枠のサイズは縦と横の比率によって5種類あるます。
F(figure)=人物を描くのに描きやすい比率として作られた。
M(marine)=1番細長い比率、海を描きやすい比率とりて作られた。
P(paysage)=風景画を描きやすい比率として作られた。
S(square)=正方形
SM(サムホール)=22.7cm×15.8cmの固定サイズ
SM意外にはそれぞれ
0号 3号 4号 6号 8号 10号 12号 15号 20号 30号 50号 80号 100号 130号 150号
とサイズがあります。
キャンバス地の素材
キャンバス布には麻、綿、合成繊維があります。
麻=強く、たわみも少ないので、キャンバス布としては1番高級なものです。
綿=麻よりも柔らかく湿気に弱くたわみやすいです。アクリル絵の具の定着は良く、価格も安い。
合成繊維=湿気に強くたわみにくい。アクリル絵の具とも相性が良い。
布目の荒さ
布の目の荒さの違いがあります。
荒目=凹凸が大きくダイナミックな表現に向く
中目=絵の具の乗りも良く、表現の幅が広く使いやすい
細目=凹凸が少なく絵肌への影響が少ない。緻密な描写に向いている
地塗りの違い
吸収性下地=アクリル絵の具に使えます。
絵の具をよく吸収するのでマットな質感になります。
ガッシュや厚塗りにはひび割れ、剥離になるので向きません。
半吸収性下地=アクリル絵の具にも油絵の具にも使えます。
艶のある仕上がりで、厚塗りにも向いています。
油性下地=油性なのでアクリル絵の具には使えません。
生キャン=地塗りが施されていない、何もついていない生地です。
自分の好みの配合で下地剤を作り、自分で塗ってから使います。
オススメの記事
以前の記事でキャンバスの種類を詳しく説明しています。合わせてこちらもどうぞ
キャンバスの張り方
では実際にキャンバスを張ります。
今回用意したのは
木枠 = 桐、F6号
私は普段の制作でキャンバスは使ってないので、安価な桐にしました。
キャンバス地 = 麻、中目、半吸収性下地
ロールで買って自分でサイズにカットするのが一般的ですが、今回はF6号用にカットしてあるものを買いました。
必要な道具
○キャンバス張り器
○タックス(釘)
○金槌(ゴムハンマー)
○マイナスドライバー(ペーパーナイフ、定規でも可)(写真には写ってません)
準備
床を傷つけないようにマットなどで保護する。
木枠を組む。
ゴムハンマーがあれば木を傷めづらいので、そちらの方がよいですね。
キャンバス地を木枠のサイズよりも5~8センチ程度大きくカットする。
今回は既にカットしてあるものを買いましたが、木枠に合わせるとこの写真くらい大きく切るイメージです。
木枠には少し中心に向かって傾斜がついていますが、傾斜のついている方がキャンバスを張る表面です。
キャンバス地と木枠の間に隙間ができます。
これが傾斜の無い面に張ってしまうと絵の具を塗ったときに木枠の角に筆が引っかかり、木枠の線が出てしまいます。
張り方
仮止めをする(小さな作品は仮止めをしなくてもOK)
何故仮止めをするかというと、大きいサイズの木枠だと、張っていくうちに生地と木枠がズレてしまうことがあるからです。
木枠の表裏を確認してキャンバスを張って行きます。
まず長い辺の真ん中にタックスを打ちます。
仮止めなので完全にタックスを打たず、頭が浮いた状態で残します。
対角線上を手でキャンバス地を引っ張りながら仮止めします。
1辺の真ん中とサイドの3点、全部で12点を仮止めします。
長い辺の中心にタックスを打つ
仮止めのタックスを抜き、今度はキャンバス張り器で強く張りながらタックスを打ち直します。
タックスの頭までしっかり打ち込みます。
打ったところのちょうど逆側をキャンバス張り器で引っ張りながらタックスを打つ
真ん中がピンと張られた状態になりました。
短い辺の中心も同じように張りながら打つ
このような順番で打っていきます。
4点を張ると菱形のシワができます。
中心から順に外側に向かって打ち進めていく。。
真ん中に打ったタックスから3〜5センチくらい間を開けて張って打ちます。
菱形のシワを端の方に追いやるイメージで引っ張ります。
このように対角線状に打ち進め、12以降も順々に外側の方へ打っていきます。
角の処理をする
最後、一つの角が後一本打てば終わりの段階で角の処理をします。
ここでピッタリ折り込まないと角が盛り上がりカッコ悪くなってしまいます。
マイナスドライバーなど角に入り込みやすいものを使って角にきっちり沿うように押し込めていきます。
キャンバス地の重なる部分にタックスを打ちます。
4隅の処理ができたら完成です!
パンと強く張っていて、叩くとボンボンと良い音がします。
まとめ
自分でキャンバスを張るのは手間ですが、決して難しいことではありません。
絵を描くことに慣れて、沢山作品が溜まってきたら、自作にチャレンジするタイミングかもしれません。
張りキャンは張り替えることを前提として作られて無いので、タックスがとても抜きづらいものだったり、木枠の強度が足りなかったりします。
なので張り替えできない張りキャンが沢山になる前に自作を始めるのも良いと思います。
是非チャレンジしてみてくださいね
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