こんにちは♪アクリル画家の初香です。
今回はアクリル絵の具ってどんな絵の具なの?
どんな風に使うのかな?
どんな絵が描けるのかな?
そう思ってこのページに辿りついたあなたにアクリル絵の具を手に取るきっかけになってもらえたらと思って記事を書きます。
私が子供の頃は一般的にはアクリル絵の具はあまり知られていなかったと思います。
私も美術予備校に通うようになってから初めてしりました。
当時は油絵を習っていたのですが、アクリルのマチエールが面白くて油絵の下地に使ったりして楽しんでいました。
今では学校の授業でも使われるようになって一般的に知られるようになりましたね。
アクリル絵の具もどんどん改良されて、絵の具のタイプも、メディウムの種類もたくさん増えて、以前以上に魅力的な絵の具になっています。
初心者の方に最初に揃える道具と選び方の記事もあるので、興味のあるかたはこちらも読んでみてください。
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アクリル絵の具とは
展色剤
アクリル絵の具に限らず、絵の具は、顔料(色の粉)を展色剤(顔料を画面に定着させる接着剤の役割をするもの)で練り合わせたものです。
その展色剤の種類によって、絵の具の種類が決まります。
透明水彩=「アラビアゴム」
アクリル絵の具=「アクリル樹脂」
油絵の具=「リンシードオイル」
性質
展色剤によって絵の具の性質が変わります。
アクリル絵の具のアクリル樹脂は、水溶性で乾くと耐水性になる性質があり、水彩絵の具と違って一度乾くと水をつけても溶け出さなくなります。
水に溶いて水彩絵の具のように使うこともでき、水を使わず、分厚く絵の具を重ねていき、油絵風の絵も描くことができます。
支持体
また、アクリル樹脂は定着が良くいろいろな素材に塗ることができるので、いろいろな指示体に描くことができます。
紙やキャンバス、パネル以外にも、木、石、金属、ガラス、陶器、などにも描けるため、表現の幅がとても広くなります。
メディウム
アクリル絵の具を使うときには、メディウムと言う絵の具に混ぜて絵の具の性質を変えるものもあります。
メディウムを使うとアクリル絵の具の表現の幅がもっと広がります。
アクリル絵の具の歴史
誕生
アクリル絵の具の歴史は、約100年ほどで、他の絵の具よりもずっと後になって発明されたものです。
1901年ドイツでアクリル樹脂が開発されました。
アクリル絵の具を作るには、多くの顔料が必要で、良い絵の具が作ることができなかったので、画家に使われる事はありませんでした。
メキシコ壁画運動
1920年代メキシコ壁画運動が起こりました。
当時文字の読めない人にメキシコ人のルーツやアイデンティティ、これから起こそうとしているメキシコ革命の意義を絵で伝えることを目的にして、建物の外壁に大きな壁が描かれました。
建物の外壁と言う風雨にさらされる環境に耐える絵の具が必要になり、アクリル絵の具が開発されました。
商品化
1955年「リキテックス」が初めてアクリル絵の具を商品化しました。
今でもアクリル絵の具の前線を担うメーカーです。
商品化されたことで、画家や一般に使われるようになり広く普及しました。
油絵の具や水彩絵の具との違い
油絵の具との違い
溶き方
油絵はリンシードオイルなどの乾性油が展色剤に使われています。
乾性油は酸化して固まります。
油絵の具は油で練ってあるため水で溶くことはできません、溶き油で溶きます。
溶き油は乾性油と揮発油を調合するのですが、絵の描き、進みの段階によって調合の比率を変えます。
調合を間違えるとひび割れや剥離をする恐れがあるので、しっかりと知識と慣れが必要ですが、アクリル絵の具は水で溶くので、難しい事はありません。
油を使う油絵は片付けや道具の手入れも手間がかかりますが、アクリル絵の具は水で洗えるので、固まってしまう前なら簡単に片付けることができます。
乾燥スピード
油絵の具は乾燥が遅く数日から10日ほどかかります。
絵の具が乾かないうちに、絵の具を乗せ進めると、下の色と混ざって色が濁ってしまいます。
逆に色と色の境目をぼかして馴染ませるのが簡単です。
ゆっくりと作業を進められるのでゆっくりじっくり描きたい人にお勧めです。
アクリル絵の具は、水彩絵の具と同じ位の速さで乾くため、どんどん重ねて書き進められますが、画面上絵の具を混ぜることが難しくなります。
「リーディングメディウム」や「スロードライメディウム」などのメディウムを使えば絵の具の乾燥スピードを遅らせることができるのですが、油絵の具ほど遅くなるわけではなく、40%ほど遅らせるだけなので、ぼかしたいところ、画面で絵の具を混ぜたいところなどを計画的に考え集中的に描く必要があります。
筆にアクリル絵の具がついたまま乾燥してしまうと、アクリル絵の具が落ちなくなってしまいます。
筆は使っていない時は水バケツに入れておくなど乾燥させないようにしてください。
発色 透明感
油絵の具は透明感が美しくグレース技法が綺麗にできます。
アクリル絵の具は、油絵ほど透明度がないので、グレースをすると少しくすんでしまいます。
しかし、今ではどんどん改善され、油絵の具に匹敵する透明度や発色の良い。アクリル絵の具も出てきたので、今後はあまり気にすることなくなると思います。
絵の具の痩せ
油絵の具は塗ったそのままのボリュームで固まりますが、アクリル絵の具は少し痩せてしまいます。
痩せることを考慮して絵の具を載せれば良いですが、アクリル絵の具は一度に厚くしすぎるとひび割れを起こします。
一度に塗る厚さは6ミリまでにするか、ヘビージェルメディウムを混ぜると解決します。
経年劣化
油絵は14世紀後半に発明されて、その頃の作品も美しく残っています。
500年以上保存ができることが実証されていることになります。
ただ、古い油絵はひび割れの入ったものも多くありますよね。
それは絵の具に弾力がない為木の伸縮やキャンバスのたわみで歪みが出てしまうからです。
アクリル絵の具はまだ発明されてから100年程なので、100年以上持つものかは誰も確認していない訳ですが、
100年前の壁画がまだ残っているここと、アクリル樹脂の性質から保存性の良いものだと言うことができます。
アクリル絵の具は柔軟性があるため油絵のようにひび割れの心配がなく、アクリル絵の具は経年劣化による黄変がないのも特徴なので、長い年月変わらない美しさで残っていく期待ができますね。
メディウム
アクリル絵の具ならではのものに「メディウム」があります。
油絵にも乾燥を早くする添加剤や、絵の具を固くする体質顔料やダンマル樹脂という艶感のとても強くできるものもありますが、
アクリル絵の具のメディウムのように多様で扱いやすいものはありません。
油絵の具との併用
アクリル絵の具は水性なので油絵の具と混ぜたり、油絵の具で描いた上に重ねることは出来ません。
しかし、アクリル絵の具の上に油絵の具を重ねることは出来ます。
油絵の具は乾燥スピードが遅いため作業スピードが上がらないのがデメリットですが、アクリル絵の具で何層か描き進めてから上から油絵の具を重ねることで、作業スピードを大幅に早めることがてきます。
水彩絵の具との違い
展色剤
水彩絵の具はアラビアゴムが展色剤に使われている絵の具です。
アラビアゴムは水で溶くことができ、乾いてからも再度水をつければ溶ける性質があるので、チューブに入ったものだけでなく、固形のものもあります。
水彩絵の具は水で溶いて塗るので厚みは出ません。
水彩絵の具を厚みをもって画面に塗るとひび割れて、剥離してしまいます。
アクリル絵の具は水に溶かずに厚く塗ることができて、柔軟性もあるので、油絵風に描くこともできます。
耐水性
水彩絵の具は乾いてからも耐水性になりませんが、アクリル樹脂は乾くと耐水性になるところが水彩絵の具と異なるところです。
アクリル絵の具は耐水性になることから、重ね塗りがしやすいこともありますが、なんといっても屋外のものや、紙以外のものにも描くことができるのが特徴です。
支持体
水彩絵の具は紙に描くものです。それ以外のものに塗っても定着が弱く弾いてしまったり、すぐに落ちてしまったりします。
アクリル絵の具は紙以外にも色々な物に塗ることができます。
発色
アクリル絵の具は乾くと色が沈んでしまいます。
なので乾く前の色と乾いてからの色にギャップが出てしまうので、それを想定して描く必要があるのですが、最近はアクリル絵の具の制度が高くなってきて、発色のギャップが少なく発色の良いものが出てきました。
しかし今はまだ、紙に描くのであれば、水彩絵の具に発色で勝るものはありません。
ガッシュとは
水彩絵の具にもアクリル絵の具にもそれぞれ「ガッシュ」があります。
「ガッシュ」とは、いわゆるポスターカラーのことです。
(若い人はポスターカラーの方がわからないかもしれませんが汗)
水彩絵の具には「透明水彩」と「ガッシュ」があり、一般的に水彩絵の具というと「透明水彩」のことです。
違いは顔料(色の粉)とアラビアゴムの比率です。
透明水彩よりも顔料を増やし、アラビアゴムを減らしたものが「ガッシュ」です。
顔料の割合が多いため、不透明でマットな発色になり、ムラなく均一に塗ることができることからポスターやデザイン画、イラストに向いています。
しかし展色剤の割合が減るため、保存性が弱くなります。
長く保存したかったり、売り物にする絵画には不向きです。
アクリル絵の具も一緒で、アクリル絵の具の顔料の比率の大きいものが「アクリルガッシュ」です。
性質も「ガッシュ」と同じです。
水彩絵の具との併用
水彩絵の具で描いてある上からアクリル絵の具で描くことは可能ですが、特にメリットがないうえに発色が落ちるので使う意味はないと思います。
アクリル絵の具の上から水彩絵の具は定着が悪くなるので使えません。
水彩絵の具とアクリル絵の具は同じ水性同士なので混ぜることはできます。
しかし組成的に問題があるかも知れないのでオススメはしません。できたら避けた方が良いと思います。
メディウム
先程から「メディウム」についてお話ししていますが、もう少しだけ詳しくお話しします。
メディウムとは
一口にアクリル樹脂と言っても色々な種類があります。それを配合するのか、作り方は企業秘密なのか、私にはわかりませんが、
アクリル樹脂を原材料にして、色々な特徴を持たせたものが「メディウム」です。
メディウムをアクリル絵の具に混ぜることによって絵の具のテクスチャーを変えるものです。
メディウムの種類
絵の具に混ぜて使うもの
艶を出すもの=ジェルメディウム、グロスメディウム
艶を消すもの=マットジェルメディウム
乾燥スピードを遅らせるもの=スロードライメディウム、リターディングメディウム
絵の具を硬くするもの=かたくするメディウム、ハイソリッドメディウム
蜂蜜状にするもの=ストリンギングメディウム
ポーリングアート=ポーリングメディウム
絵の具に混ぜずに使うもの
下地剤として使うもの=ジェッソ
画面に立体的な凹凸を作るもの=モデリングペースト(テクスチャーアートに使われているものです。)
画面の保護ワニス=グロスバーニッシュ、マットバーニッシュ
メディウムについて詳しく知りたい方はこちらの記事がオススメです
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アクリル絵の具のメリットとデメリット
メリット
○アクリル絵の具は速乾性で作業スピードを早くできる。
○乾くと耐水性になる為耐久性が高く、紙以外の幅広い支持体に描くことができる。
○水で薄めて水彩画のように描ける。
○水彩絵の具より重ね塗りが簡単にできる。
○厚塗りできるので、油絵のように描くことができる。
○メディウムを使って絵の具のテクスチャーを変えることができる。
○油絵の具に比べて道具の手入れが楽。
○コラージュに適している。
デメリット
○乾くと水で溶けないので、筆を硬めないよう注意が必要。
○水彩風に描く場合、ウォッシュの技法ができないので修正が難しい。
○油絵ほど乾燥スピードを遅くすることはできない。
○乾くと色が沈む。
○寒さに弱く、4℃以下になると被膜がでにくく、定着力が弱まる。
私の視点
アクリル絵の具も油絵の具も発色が良いですが、発色の質感というか、絵の具感が違って感じられます。
油絵の具は、アクリル絵の具より、絵の具自体に深みと重量感があります。
アクリル絵の具でも色に深みのある重厚感ある絵が描けますが、それは表現によって出されるもので、油絵の具は絵の具そのままで深みとと重厚感があるように私は感じるのです。
バロック絵画のような重厚感のある表現でなくても、例えばルノアールのような白いキャンパスに直接鮮やかな色を乗せる表現でも、装飾でごてごてな額縁に負けないのは、もちろん表現力の高さからでしょうが、絵の具自体にも力があると私はおもいます。
アクリル絵の具で、油絵風の絵を描こうとする時、私は長い間油絵の具に慣れ親しんでいるので、油絵の絵の具の抵抗感や、質の異なる発色に、違和感を感じるのです。
油絵風の絵は描けますが、絵の具の使い心地まで同じようにはいかないということです。
このように水彩絵の具でもこだわりがある人もあることでしょう。
紙に描く場合、水彩絵の具の方が発色が美しいですし、あくまでアクリル絵の具で描けるのは水彩風、油絵風なのです。
アクリル絵の具の可能性
私はめちゃくちゃアクリル絵の具を全力でオススメしてるんですよ。これでも笑
アクリル絵の具はデメリットを差し引いてもあまり有る魅力がある絵の具です。
デメリットが解消された商品もどんどんでてきています。
最近は「テクスチャーアート」が人気を博してします。
インテリアとして飾りやすくオシャレに見えますよね。
多様な支持体に多様な表現が出来ることで、これからもいろんなアートが現れてくると思いますし、
今まで見たこともないような絵の具が出てくる可能性もあります。
今後ますます楽しみです。
まとめ
アクリル絵の具は同じ水溶性の絵の具の水彩絵の具とも違い。
油性の油絵の具とも違いますが、同じような絵が描ける面白い絵の具です。
紙以外のものに塗ることもでき、メディウムによって絵の具のテクスチャーも変えることができ、多彩な表現ができます。
油絵の具ほど手順に縛りも無く、感覚的に描くことができ、手に取りやすいのも魅力です。
これからのアクリル絵の具の発展も楽しみにしたいですね。
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