こんにちは♪アクリル画家の初香です。
キャンバスって使ったことはないけれども、ベレー帽を被って、イーゼルを立てて描いている絵描きの典型的なイメージがあるし、100均でも買えて、インテリアに使う人も居るし、なんだか馴染みのあるような、無いような、そんなものではないですか?
キャンバスって木枠に布が張ってある単純な物に見えて、実はなかなか奥の深い物なんですよ。
これからアクリル絵の具を始めたい人、始めたばかりの初心者の方に、細かな話は省き、分かりやすく説明します。
キャンバスとは
キャンバスとは帆布のことで、木枠に張り下地塗りがされて、油絵やアクリル画の支持体として使われます。
他の支持体には無い大きな特徴は布目があることと、描く時に弾力を感じることです。
キャンバスは麻でできたもの、綿でできたもの、合成繊維でできたものとありますが、どれも織り目の凹凸があります。
下地塗りもその凹凸を埋めてしまうようなものではないので、絵肌に影響を与えます。
キャンバスは木枠に張られたもので、裏に布を支えるものはありません。
そのため筆を押し付けると少し凹み、弾き返されるような弾力があるので、他の支持体にはない描き心地が特徴です。
特にペインティングナイフを使った時の感覚は大きく違います。
キャンバスの種類
キャンバスはどれも同じように見えて、布の素材、布目の荒さ、地塗りの種類など色々と違うものです。
素材
麻
麻は基本的には亜麻のことです。
麻は強度が強く、たわみも少なくキャンバスとして1番高級なものです。
麻のキャンバスは油絵用に油性の下地が塗ってあることが多いですが、アクリル絵の具に使える下地がされているものもあるので、アクリル絵の具に使えるものか確認して買いましょう。
綿
綿は麻よりも柔らかくたわみやすいので、筆圧や湿気なのでたわむことがあります。
しかし、アクリル絵の具の定着が良いという性質があるので、アクリル絵の具に悪くない素材です。
麻よりも随分安いのでどんどん描いて練習したいときにもおすすめ。
合成繊維
湿気に強くたわみにくい素材です。
水性の絵の具に向いているので、アクリル絵の具にも良いものです。
地塗り
キャンバスを買う時に1番気をつけてもらいたいのが地塗りの種類です。
アクリル絵の具に使えないものもあるからです。
吸収性下地(水性下地)
吸収性下地は、アクリル絵の具が使えます。
絵の具が吸収されやすいので、アクリル絵の具の艶感がマットな感じになります。
アクリルガッシュや厚塗りはひび割れや剥離になりやすいので向いていません。
油絵には使えないキャンバスです。
半吸収性下地(エマルジョン下地)
アクリル絵の具と油絵の両方に使える物です。
吸収が穏やかなので、艶のある仕上がりで、アクリルガッシュ、厚塗りにも適しています。
油性下地
油絵専用のものです。
油分のある上にはアクリル絵の具が定着しないので、描けたように見えても後で剥がれ落ちてきます。
アクリル絵の具では使えないキャンバスです。
布目
キャンバスには糸の太さで布肌の凹凸感がかわり、細目、中目、荒目とあります。
(上の写真の⬜︎の一辺がだいたい3センチくらいのときに実寸のイメージです)
細目
細目は布目の凹凸が1番少ないものです。
肌目に筆や絵の具の引っ掛かりが少ないので、細密で繊細な描写がしやすく、凹凸が目立たないことで絵の見え方に影響が1番少ないです。
中目
中目は程よい凹凸のあるものです。
絵の具の絡みもよいので、定着もよく表現の幅の広いオーソドックスキャンバスです。
荒目
荒目は凹凸の強いものです。
かすらせたり、盛り上げたりする技法に向いていて、ダイナミックな表面に向いています。
少し癖があるので、慣れないと描きづらいかもしれません。
サイズ
キャンバスのサイズはあまり馴染みの無いものだと思います。
そのサイズはF、M、P、Sと四つのタイプがあり、縦横の比率の違いで分けられています。
(F)figure
Fは肖像画を描くのにちょうど良い比率に作られています。
肖像画以外にも使いやすい比率なので、Fサイズは多く使われて、額縁も既成のものはほぼFサイズなので、ほかのサイズの額縁は既製品では少なくなります。
キャンバスも額も商品が多いので初心者の導入には1番オススメです。
(M)marine
Mは1番細長い比率のもので、海を描くのに適したサイズに作られています。
黄金比率という言葉を聞いたことがあるのではないかと思いますが、Mはちょうど黄金比率になります。
(P)paysage
Pは風景画に向いた比率で作られています。
(S)square
Sは何を描くかとは関係なく、正方形に作られています。
Fサイズの次によく使われています。
最近人気のテクスチャーアートで好んで使われるので、使われる頻度はどんどん上がっているのではないでしょうか。
サイズ展開
大きさは、0号、SM、3号、4号、6号、8号、10号、12号、15号、20号、30号、50号、100号、130号、150号、200号とあり、
数字が大きくなるほど大きなものになります。
包み張りキャンバス
キャンバスは木枠の側面に釘を打って張りますが、「包み張り」は木枠の裏側で釘を打ち貼ってあります。
絵の側面に釘がないので、側面まで絵を描いたり、マスキングテープで絵の具がつかないように描くことで、額縁に入れずにそのまま飾ることができます。
他の形
他にも○形や△形のも販売されています。
初心者にオススメのキャンバス
キャンバスについて説明してきましたが、色々あって何を選べば良いのか迷ってしまうのではないでしょうか?
初心者の方にオススメのキャンバスの選び方をお話しします。
とにかく沢山描いて慣れて腕を上げていけるように気兼ねなく沢山描けるからです。
張りキャン
まずは「張りキャン」です。
張りキャンとは、すでにキャンバスの形に出来上がった既製品のことです。
キャンバスは布地やサイズ、下地のタイプなど色々あるので、こだわりのある人は木枠とキャンバス地を別々に買って自分で組み立てて張ります。
下地も自分で塗る人もいます。
美術学生さんなど、膨大な枚数を描いている人は、張りキャンで毎回描いていると、収納場所を圧迫してくるので、描き上がった絵を木枠から剥がして、木枠を何度も再利用して描くこともあります。
沢山描くようになったら自分で張るのもオススメですが、最初は気軽にどんどん描ける張りキャンがいいと思います。
張りキャンはほとんどFかSですが、Fがどんなモチーフでも描きやすいので、Fを買えばいいと思います。
張りキャンのほとんどが中目なので、表現の幅が広く初心者の方にも使いやすいです。
キャンバスボード
キャンバスボードはパネルや厚紙にキャンバス地を貼り付けてあるものです。
私がオススメするのは厚紙に貼ってある板状のものです。
板状のキャンバスボードは木枠やパネルに張ってあるものと違って厚みがとても薄いので、沢山描いてもかさばらないうえに、お値段も安いのでどんどん描いて腕を上げるのにピッタリです。
サイズ
大きさはF0号から6号位が初めやすいサイズです。
F0号=180×140㎜
F6号=410×318㎜
大きいサイズを描くのは、大きなサイズに描く技術というのが必要になります。
ただ画面が大きくなるというわけにはいかないんですね。
なので小さいサイズから描いていくのがオススメです。
キャンバスでの描き方
キャンバスに慣れていない人は水彩のように薄く塗ってしまいがちになります。
キャンバスは布目の凹凸がある支持体なので、紙やパネルよりも物質感が強く出ます。
その上にさらりと薄く一層塗るだけだとキャンバスの物質感に負けて貧弱な印象の絵になってしまいます。
よほどの実力者でない限りそのような描き方はオススメしません。
油絵を描くときのように重ね塗りで層を作っていく描き方の方が良いです。
重ね塗り
重ね塗りとは、白い画面にいきなり完成の描写密度で描くのではなく、
何層にもフィルターをかけていくように、絵の具を重ねながら描写を細かくしていく描き方です。
有色下地
有色下地は油絵をやっていた人ならばよく知っていると思いますが、そうでなければ馴染みの無いものだと思います。
有色下地とは、白い画面に描き始めるのではなく、あらかじめ全体に色を塗っておき、色のついたキャンバスで描き始めることです。
有色下地は古くから使われている技法で、描画スピードを早めたり、描くモチーフの固有色を効果的に引き立てるのに有効な技法です。
初心者にオススメの描き方
私が教えている生徒さんには必ず最初に有色下地での描き方を教えています。
初心者の方に、キャンバスに描く、アクリル絵の具で描くということを理解してもらうのにとても有効な方法だからです。
有色下地にも色々なタイプがあるのですが、
初心者の方はまず、茶系の有色下地で始めてみましょう。
使う色は「イエローオーカー」「バーントアンバー」「ローアンバー」「ローシェンナ」がやりやすいと思います。
このどれかの色を水で塗りやすい程度に薄めて画面全体に塗って乾かします。
(この写真は緑で塗ってあります)
少々ムラがあっても気にすることはありません。
しっかり乾いてから絵を描き始めてください。
まずはこのルールだけです。
このやり方の効果は、
①水彩のような描き方では絶対に描けないことで重ね塗りをして描くという感覚が自然と身につく。
②初心者の方は層の量が不十分になりがちだが、これで1層必ず増えること。
③有色下地にすることで、色に深みや奥行きが出て、それだけで絵が良く見えること、その効果を実感してもらえること。
④画面にまとまりができる
これだけの効果があるので是非試してみてください。
立て描く
キャンバスは基本的にイーゼルに立て描きます。
寝て描くこともできますが、画面に手をついて描くと布地が凹み癖がついてしまいます。
立てて描くのは目から画面までの距離を同じにする意味もあるので、立てて描くのがオススメです。
いきなりイーゼルまで用意しなくても、机に段ボールでも置いて、それに立てかけても描くことができます。
ペインティングナイフ
ペインティングナイフを使うのにキャンバスはとても向いています。
キャンバスの弾力がちょうどペインティングナイフを使いやすくして、キャンバス地の凹凸に絵の具がしっかり絡んでくれる感じもします。
パネルでも使えますが、パネルは固くしなることがないので、使いづらく感じます。
100均キャンバス
100均でもキャンバスが買えます。
ダイソーはF3号(110円)とF4号(220円)があります。
セリアはF0号(110円)があります。
昔ダイソーでキャンバスボードが買えた記憶がありますが、今はないみたいで残念です。
100均のキャンバスは長期保管するつもりの作品には向きませんが、
とりあえず描いてみたい人、沢山描いて練習したい人にはピッタリです。
張る力が若干弱かったり、木枠の跡が出やすかったりしますが、描きにくいほどのことは無いです。
まとめ
今回は、初心者の方でも迷わずキャンバスを買えるようにと記事を描きました。
キャンバスには色々なタイプがあり目的によって使い分けるので、初めての人には難しく感じるかもしれませんが、
張りキャンを買えばまず間違いありません。
張りキャンは幅広い対応できるオーソドックスなものがほとんどだからです。
気をつけてもらいたいのは、アクリル絵の具に使えるキャンバスかだけです。
間違って油絵専用のものを買ってしまったら使えません。
アクリル絵の具を使い始めたばかりの人に有効な「有色下地」を使った描き方も紹介しました。是非試してみてください。
慣れてきたら今回紹介した有色下地の他、色々な有色下地のやり方があるので色々試してみてください。
アクリル絵の具はとても扱いやすく、表現の幅も広く、楽しい絵の具です。
気軽に初めてみてくださいね。
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