絵が濁った色になってしまう 初心者でもわかりやすい混色、色の扱い方

絵を教える仕事をしていると、色の扱いがうまくいかないという悩みをよく聞きます。

実際、色を使わないデッサンなどは凄く上手に描かれるのに、色を使ったとたん色が濁ったり、配色がうまくいかず冴えない絵になってしまう人は多くみえます。

私自身も色の使い方は苦手で学生の頃から何十年と格闘していました。

しかし、濁る理由を知れば、濁る悩みはすぐに解決できます!

色の使い方はコツがあり、それを踏まえて練習していけば確実に上手く扱えるようになります。

目次

○色は混ぜるほど濁る

○画材の使い方で濁る

○濁りやすい色と濁りにくい色

○注意の必要な絵の具

○まとめ

色は混ざるほど濁る

最初に何故色が濁るのか、使う画材によっても違う点はありますが、まずはどの画材にも共通の話をしていきます。

赤色と青色と黄色が有れば全ての色が作れるという話をきいたことはありませんか?

実際には上の図のシアン、マゼンタ、イエローの色の三原色と言われる色を使った場合です。

減法混色と言われるものですが、簡単に説明します。

私たちが赤い物を見て赤いと感じるのは、その物が光の赤色以外の色を吸収してしまい、赤色だけを反射して私たちの目の中に入って来ているから、赤いと感じるのです。

セロファンを例えに出して説明しましょう。

青色のセロファンに光を通して見ると、青色以外の光の色を吸収して、青色の光だけを通過

させて目に入ってきます。

そこに黄色のセロファンを重ねたら、青色の光の波長の中にも黄色の光の波長の中にも両方に共通して含まれる光の波長だけが目に届いてくるようになります。その波長の色が緑色です。

このように色を重ねるほど、吸収される光の色が多くなり、目に届く光の量が少なくなるので暗くなっていきます。

減法混色の図

混色の色選びは基本的にはこの考え方を使っていきます。

青と黄色を混ぜれば緑色、赤と黄色を混ぜれば朱色などという感じです。

理論的には色の三原色で全ての色が作れるし、色数が増えるほど暗くなっていきます。

しかし、実際に絵の具を使った場合、暗くなるというだけでなく、濁りを感じます。

絵の具は基本的に「顔料」という色の粉とそれを紙やキャンバスなどに定着させる接着剤の役割をする「展色剤」を練り合わせて作られています。

水彩絵の具、アクリル絵の具、色鉛筆など画材の違いは展色剤の違いです。

顔料は鉱物や、土、炭などでできていますので、それぞれの物質の持つ性質があり理論通りにはならないのです。

実際には色は混ぜれば混ぜるほど濁っていきます。

一番彩度の高い(色が鮮やか)のはチューブから出したままの色です、そこに混ざる色数が多くなる程色味は沈んでいき濁っていきます。

例えば、緑色が欲しいとします、緑色は青色と黄色を混ぜると作れます。

この混色して作った緑色と、純色(チューブから出したままの)緑色を比較してみましょう。

チューブの緑と混色の緑

上が純色の緑色で、

下が青色と黄色を混色して作った緑色です。

原色の緑色より混色して作った緑の方が暗くくすんでいることがわかりますね。

ここに他の色も混ぜてみましょう。

3色混ぜた緑

より暗くくすんだ色になりました。

しかし類似色の青色を混ぜたので大きくは濁りません。(後に詳しく説明します)

4色目を混ぜてみましょう。

4色混ぜた緑

4色目は補色を混ぜたので一気に黒っぽく濁りました。(補色は後に詳しく説明します)

このように混ぜる色数が増えるほど色は濁っていきます。

混ぜる色にもよりますが、2〜3色までにとどめておくと安心です。

そのためには純色で色々な色を持っているのが良いので、絵の具のセットは3色だけではなく、12色入り、24色入りなど多い色数がセットになっているのです。

特に鮮やかなピンク色と紫色は混色では出せない色になるので、原色のチューブで持っていると良いでしょう。

混色の紫と混色のピンク

ピンクの混色を見れば分かりますが、無彩色の白色が混ざってもくすみます。

この仕組みを理解して、混色する色数を制限していれば色の濁りに悩まなくて良くなります。

欲しい色を作る時無駄に色数を多く使うと濁るので、最小限の色数で欲しい色が作れるように何色と何色を混ぜるとどんな色ができるということを覚えておくと良いでしょう。

参考に水彩絵の具で、2色混ぜた表を作りましたので参考にしてください。

混色図

2色だけでもかなりの色が作れます。

上以外の問題で濁る

しかし!まだ濁る!?

上記のことを守っていても濁る場合があります、それは次のような失敗をしている時です。

『汚れた道具を使っている』

筆やパレットが汚れていて、そこに着いている色が意図せず欲しい色の中に混ざってしまったり、筆を洗って汚れている水を絵の具を薄めるのに使うことで濁ります。

道具はしっかりと綺麗にして、絵の具を薄める時は綺麗な水を使いましょう。

油絵の場合は水彩のようにこまめに筆を洗うことはできません。色を変える時は筆も変えましょう。必然的に油絵は筆を沢山使うことになります。

その日の制作が終了してからまとめて筆を洗います。

筆洗液で洗うだけではなくて石鹸を使って水洗いもしましょう。

『画面の上で色が混ざっている』

例えば、油絵の場合、乗せた絵の具が乾くのに早くても数日かかります。しっかり乾くのを待って絵の具を重ねれば濁りませんが、初心者の場合夢中になって描いているうちに、乾かない絵の具が画面の上で混ざりあって濁ってしまいます。

もっと描きたい気持ちになってもそこは我慢して、濁らない程度のところで中断して絵の具が乾くまで待ってから描き進めましょう。

アクリル絵の具の場合は絵の具の乾きが早いので油絵ほど心配はないですが、乾く前に他の色を塗れば当然油絵と同じように絵の具が混ざるので気をつけましょう。

絵の具が画面の上で混ざり合ったタッチで描きたい場合は、混ざった時の色味を考えて、色数を逆算して減らしておいたり、濁りにくい配色(後に説明します)にすると良いです。

水彩絵の具の場合、一度乾いた絵の具も水に濡れれば溶け出してくるので、色を重ねて塗る場合、時間をかけて同じ場所を触っていると前に塗った絵の具が溶け出してきて色が混ざってしまいます。

『紙の奥に刷り込んだ場合』

色鉛筆の場合は濁りにくい画材なのでさほど気にする必要はありません。

しかし注意したいのは、紙の中に擦り込めると色に紙の影が落ちてくすんで見えるようになります。

水彩絵の具でも筆で擦り込むように塗れば同じことが起こります。

濁りにくい色と濁りやすい色

次は先程少し話に出た「類似色」「補色」について詳しく説明します。

色の中には濁りやすい色の組み合わせと濁りにくい色の組み合わせがあります。

それは色相環を見ればわかります。

色相環とはこのように色の性質順に丸く並べられたものです。

色相環

誰でも一度は見た覚えがあるのではないでしょうか?

この色相環で近い色同士は類似色といい、

真逆の位置にある色を補色と言います。

色相環で見る補色

類似色は色の性質が近いので、これで配色をすると柔らかい諧調のイメージになり、混色をしても濁りにくいです。

類似色の混色

補色は真逆の位置にある色です。

真逆の性質の色同士になるので、配色する場合は強い対比によってお互いに引き立て合います。

混色するとお互いの色味を相殺して濁った黒っぽい色になります。

反対色の混色

黄緑と紫の混色

補色同士では無いが、補色に近い色(反対色)なので、補色と同じように濁る

色相環で遠くの色にいくほど濁りやすい色ということになります。

注意の必要な絵の具

メーカーによって「和の色シリーズ」「パステルカラーシリーズ」のような商品が出品されています。

絵の具は複数の顔料からできていますが、このような絵の具は最初から多くの顔料を混ぜて絶妙な色を作っています。

これらの色は最初から複数の色が混ざっているので、当然そこに他の色を混ぜれば濁りやすいです。

特別なカラーのシリーズなのだとすぐわかる絵の具なら良いのですが、油絵によくありますが、基本色と区別無く同じ棚に並んでいることがあります。

チューブの表示に何色が使われているのか書いてありますので、表示を確認して注意して使いましょう。

チューブの顔料の表示

3種類の顔料が使われている

このような絵の具は混色に注意が必要ですが、メーカーの色のプロが絶妙な配合でとても素敵な色を出しているので上手く使うのもいいですね。

まとめ

○色を作るときは基本的に色の三原色の仕組みで作るが、色数が多い混色は濁る。

○混色する色は2〜3色が安心。

○道具は綺麗にして使い、意図しない色が混ざるのを防ぐ。

○画面の上で意図ぜず色が混ざらないように注意する。

○類似色は混ぜても濁りにくい。

○補色や補色に近い色は濁って黒っぽい色になる。

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