絵が上手くなるためには数多く描かなければ上達しないと思って
ひたすら沢山描いていても、全然上達している気がしない。
そういう悩みはありませんか?
今回はそんな悩みについてお話ししていきます。
いきなり結論から言いますが、
絵は描かずに上手くなることはありません。
沢山描くほど絵は上達します。
では、なぜ描いても描いても上達しないという悩みが出てくるのでしょうか?
その理由をざっくり8つに分けてお話ししていきます。
『沢山描いているつもりで、充分な量描いていない』
そもそも沢山描いているつもりで、言うほど描いていない場合があります。
毎日描いても、作品を1か月で1枚完成させるのと1週間で1枚描いているのでは、たとえ毎日描いていても枚数が全然違ってきます。
大きい作品をじっくり描き込み完成させるのは、その力が必要になるので、決して無駄なことではありません。
しかし、枚数をこなすには相当な時間が必要になります。
『しくじり初香の場合』
大学時代は、数ヶ月に一回講評会があり、100号以上の作品を描き上げる必要がありました。
私は悩んで悩んで絵を描いていたので、なかなか手が進まず、制作に時間がかかり、徹夜も何日もしながら、やっとのこと講評会を迎えて。
講評会が終わると、魂が抜けたように気力もやる気もなくなり、英気を養うのにしばらく時間がかかって、
気づいたらもう、「やばい!もう次の講評会の絵を描き始めなくちゃ!」となっていました。
100号以上の大作ばかり描いて、小作が全然描けなかったのです。
こんな表現を試してみたい、こんなモチーフを描きたいなど、色々やりたいことがあっても、大作ばかりでは、なかなかやりたいことがこなせていけずに、
上達もゆっくりにしかできませんでした。
小作でも、完成させなかったり、小さいからと気が抜けたように描いていては、思うように上達できませんが、
一枚一枚しっかりやり切って、その上で枚数を多く描くことが、『沢山描けた』と言うことです。
『手癖で描いている』
いつも同じように同じものを、頭を使わず手癖だけ描いていては、いくら数多く描いていても上達はしません。
『目的なく描いている』
いつも描き慣れているものを手癖だけで描いていたら楽ですが、そこで成長は止まってしまいます。
作品を作るということは当然、何をどのように表現したいのか、何を伝えたいのか、思いを込めることです。
自分の思いを伝える為には、このような色使いでいいだろうか?モチーフはこれでいいだろうか?構図はどうすれば効果的だろうか?筆のタッチはどうしたらいいのだろう?
と考えることは沢山あります。
そう言う目的を持って、それをやり切ろうとする。
やっていて上手くいかない場合も沢山あると思います。
そしたら、何が問題なのか考え、修正を繰り返します。
そうやっていくことが上達につながります。
もし、形を取るのが苦手だ、とか問題がわかっていて、自分の弱い部分を強化させたいなら、
作品をつくるのではなく、練習と割り切って、
デッサンや、形を取るための練習をするのも、効果的だと思います。
『問題点を解っていない』
自分で描いたものはなかなか客観的に見れないものです。
どこが問題なのかわからなければ、改善することもできません。
客観的に見るのに、やりやすい方法は、
・時間を開けて見てみる。
描いている途中や、描いた直後は客観的に見ずらいので、1日や、数日、時間を開けてみると客観的に見やすくなります。
何ヶ月も前に描いたものを見返してみることで、発見することもあるかも知れません。
・絵から離れて見てみる。
絵から離れて遠くから見てみると、絵の全体像が見えやすく、気持ち的にも少し距離を取ることができるので、客観的に見やすくなります。
・絵の向きを変えて見てみる。
絵を横に向けたり、逆さにしたり、向きを変えると、構図や形の間違いに気付きやすくなります。
裏から透かせて見えるものは、透かしてみるのもいいです。
透かせないものを透かせた向きで見たい時は、写真に撮って反転させるとできます。
『的確なアドバイスをくれる人がいない。』
問題点を見つけるのに1番良いのが、人から教えてもらうことです。
絵がパッとしないけど、自分ではどこをどう直せばいいかわからない。
形がなんかおかしい気がするけど、どこがおかしいのかわからない。
と、自分ではわからないこともあると思います。
美大受験予備校など、高いレベルを求められるところでは、
「モチーフの裏側が描けてない」
「空気が吸えないよ」
「腰骨がないよ」
など、????なことが普通に指導されます。
「見えてるのはモチーフの表側だけなんだから、裏なんか描けるわけないじゃないか?」
「空気が吸える?吸えない?イミフ」
「服の中の体のさらに中にある腰骨なんてどうやって描くんだ?」
とか、わからない人にはわからないものですが、
裏側も、空気も、腰骨も、描ける人には描けてないことがすぐにわかるんです。
(描ける人=わかる人 ですが、わかる人≠描ける人 です)
なので、〝わかる人〟にアドバイスをもらうことです。
わかる人というのは、美大卒、独学に関わらず、理論的なこと、技術的なことをしっかりと学び、力量もそこそこある人です。
身近にそんな人が居ればいいですが、教室で教えてもらうのも良いとおもいます。
『知識がない』
独学で絵を描いていると、知識が抜け落ちていることがあります。
例えば、円柱を描こうと思った時に、良く見て観察して描くのは当然のことですが、
パースのことを理解して描く必要があります。数学の図形の書き方では、現実の円柱は描けないのです。
それを知っているか、知っていないかで、絵は全く変わります。
知識を持って描くだけで急に絵が上手くなるので、知識がない人は超ラッキー!
一気に上手くなるポテンシャルがあります。
『効率が悪いことをしている』
先程話した手癖だけで描いているのも上達するためにはとても効率のわるいことです。
知識なく、ただ良く見て描くことも効率の悪いことです。
例えば、人の全身の形が取れるようになりたいと思い、上手い人の模写をひたすらやっている。
それでも学ぶことはいっぱいあると思いますが、効率が良いとは言えません。
効率の良いやり方をしようと思ったら、美術解剖学の、全身骨格や、筋肉図をスケッチして、形の仕組みを知った上で、
実際にモデルを見ながら、〝ここがこう言う形になっているのは、骨格がこうなっていて、そこに筋肉がこうあるからだ〟ということを確認しながら描く。
これが効率よく人の形を描けるようになる効率の良い方法だと思います。
家族にモデルになってもらったり、クロッキー会やデッサン会に参加すると良いでしょう。
人物以外にも効率のよいやり方があります。
それを知るのが良いと思います。
(効率の良い練習方法も別の記事で書こうと思います。)
『資料を見ない』
資料を見ないで描くということは、自分の頭の中のイメージに頼って描くということです。
自分でイメージできるものは、自分で描ける範囲のものだけになります。
それか、イメージはすごくレベルの高く持っていても、実際にはそれを再現できないことになります。
私は必ず資料を用意します。
実物のモチーフを用意したり、写真を用意したりします。
自分のイメージだけでは描けなかったものが、資料があることで描けるようになります。
資料をしっかり観察して描くということは、インプットにもなります。
〝草の茎の分かれ目はこういう形になってるんだ〟
〝犬と猫の爪の構造の違いに気づいた〟
など、自分の引き出しにないものが、どんどんインプットされていきます。
インプットの量が多いほど上達していきます。
『エスキースをしない』
エスキースは絵描きによって随分と違います。
全くエスキースをせずに描く人、
ほとんど作品と言っていいほどのエスキースまで描く人、
大体のイメージが固まるまでエスキースをする人
色々ですが、
素人ほどエスキースをしない傾向があります。
これから上達していきたい思っている人は、エスキースをした方が良いです。
エスキースとはアニメを作るときの絵コンテみたいなものです。
絵コンテなしでいきなりアニメを描き出すことはないでしょう。
どんな構図にすれば、自分の表現したいことが表現できるか、どんな配色が効果的かということを
実際に簡単なスケッチで、色々なパターンを描いて見ます。
構図や配色の勉強にもなりますし、絵もぐっと良くなることでしょう。
『インプットをしない』
インプットしなければ、自分のイメージは貧弱なものになってしまいます。
綺麗な自然の風景画が描きたいならば、実際に自然が感じられるところに行ってみたり、
猫を描きたかったら、実際に猫に触ってみて、その柔らかさ、硬さを感じてみる。
絵を鑑賞も沢山してください。
絵を鑑賞する時は、是非その構成も見てください。
〝淡い調子の絵なのに印象が弱くならないのはどうしてだろう?〟
〝淡い調子の中でも色の効かせ方が上手いからかな〟
〝ここの描き込みが効いているのかな〟
このように学び取るように見ていけば、いい絵にするために必要なことがどんどんわかるようになっていきます。
『まとめ』
なんとなく沢山描いてても上手くはなりません。
これからは、〝今回は描き込みにこだわって描いてみよう〟〝配色を学ぶために模写をしよう〟など、目的を持って描いて見てください。
上達するには、枚数も、時間も、努力も必要です。
すぐには上手くならないので、上達を実感できずに苦しくなってくることもあるでしょう。
そうしたら、一年前、二年前の作品を見てください。
似たように見えても、目的を持って描いてきたあなたならば、上達の証を見つけることができるでしょう。
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